【シアトルSaison】Floodland Brewing SEN XXVI – 水のような口当たりと複雑な発酵香が融合した職人的セゾン
【#りほびーる No. 512】シアトルを代表する高評価ブルワリーFloodland Brewingから登場した「SEN XXVI」は「26番目のセネセンス」という意味の定番シリーズ。2023年5月に開放発酵し、その後ニュートラル樽で二次発酵を完了させた単一麦汁のスペルト小麦セゾンで、Willamette Valley FarmsのKirk家が栽培した全花のCrystalホップを使用しています。q1



この記事でわかること
- 水のように軽やかな口当たりと複雑な風味プロファイルの特徴(筆者の感想)
- Floodland Brewingの職人的な樽熟成哲学と芸術的アプローチ
- セゾンスタイルの特徴と全花ホップがテクスチャーに与える影響
- シアトルブルワリーの特殊な購入方法と入手戦略
ルネちゃん
セゾンってどんなビールなのワン?初めて聞いたよ…
りほ
セゾンはベルギー発祥の農場地ビールだよ。もともと夏の農作業用に作られていたんだ。さっぱりとした飲み口と複雑な酵母の風味が特徴で、Floodlandはこの伝統的なスタイルを現代的に再解釈しているんだ。
ビール基本スペック
ビールの基本説明
SEN XXVIは「26番目のセネセンス」という意味で、Floodland Brewingの定番シリーズの一つです。このビールは単一麦汁のスペルト小麦を使用したセゾンで、2023年5月に開放発酵を行い、その後ニュートラル樽で二次発酵を行いました。Willamette Valley FarmsのKirk家が栽培した全花のCrystalホップを使用しています。
もともとはブレンドの一部として使用する予定でしたが、「補完なしの単一の側面がどのように見えるかの洞察」として単独で提供されることになりました。ボトル内ではオーガニックシュガーを使った再発酵によるコンディショニングが行われています。2024年8月8日に瓶詰めされ、2028年春までの消費が推奨されています。
ブルワリープロフィール:Floodland Brewing
シアトルに位置するFloodland Brewingは、創業者のAdam Paysseによって運営されるブルワリーです。公式情報によると、近代的な醸造所で一般的に使用されるグリコールや冷却システムを使用せず、伝統的な醸造方法を採用しています。
創業者のAdam Paysseは醸造を「表現と芸術創作のための手段」として捉えていると述べています。本記事作成時点(2025年4月)のUntappdデータによれば、このブルワリーは世界ランキングで第3位、アメリカ国内では第1位という驚異的な高評価を得ており、59,749件のレーティングを持つ34種類のビールの平均スコアが4.433という非常に高い数値を記録しています。特にセゾンスタイルでは他の追随を許さない評価を獲得し、「Senescence」シリーズは多くの愛好家から絶賛されています。
ルネちゃん
高評価のブルワリーってすごいワン!どうやったらそんなに評価が高くなるんだろう?
りほ
Floodlandの高評価の理由は、品質へのこだわりと独自の醸造アプローチにあるんだ。Adam Paysseは「自分の好みと理想を反映したビール」を作ることに注力し、少量生産の希少性と熟成による複雑さを大切にしているよ。
【初心者向け解説:ニュートラル樽とは】
SEN XXVIの熟成に使用されている「ニュートラル・バレル」(中性樽)とは、数年間使用した後のオーク樽で、もはやビールやワインに強い風味やタンニンを与えなくなったものを指します。一般的には3〜4年以上使用した樽は、オークの風味をビールに与える能力が大幅に低下します。これらの樽は依然として緩やかな酸素供給を可能にし、発酵過程に繊細な影響を与えます。Floodlandの公開情報によれば、彼らは基本的に古くて非常に中性的な樽を好んで使用しており、オーク材からの抽出を最小限に抑えるとのことです。
【初心者向け解説:セゾン/ファームハウスエール】
セゾン(Saison)は、もともとベルギーのワロン地方の農場で季節労働者のために醸造されていた農場地ビールです。「セゾン」はフランス語で「季節」を意味します。伝統的には夏の間の作業のために春に醸造され、低アルコールで喉の渇きを潤すためのビールでした。現代のセゾンは、複雑な酵母の特徴、穀物の風味、軽快なボディ、そして控えめなホップの苦みが調和したスタイルです。クラフトブルワリーの中には、Floodlandのように伝統的なスタイルを現代的に解釈し、樽熟成や特別な酵母株を使用することで、独自の表現を追求するところもあります。
ルネちゃん
ホップってビールの苦さだけに影響するんじゃないの?テクスチャーにも影響するなんて初めて知ったワン!
りほ
実はホップはビールの味わいに多面的に影響するんだよ。全花ホップに含まれるタンニンやポリフェノールは微妙な渋みをもたらし、精油成分は口当たりに滑らかさを与えることがあるんだ。さらに酵母と反応して風味とテクスチャーに影響することもあるよ。
Floodlandの醸造哲学
醸造哲学の特徴(公開情報より)
Adam Paysseはインタビューで「バレル発酵は頭の中で思い描くビールを創造するための道であり、時代錯誤的なものではない」と説明しています。また樽の選択に関しては、オーク材からの抽出を最小限に抑えるよう樽のメンテナンスを行い、「フィールドブレンド」というワイン造りのコンセプトを採用しているとのことです。フルーツ、蜂蜜、花などの新鮮な材料を使用することもあり、時には「アカシア樽」も使用します。創業者によれば「アカシアは超中性的な傾向があり、ホッピーなビールを際立たせる」効果があるそうです。
ルネちゃん
普通のブルワリーとどう違うんだワン?特別なことをしているの?
りほ
Floodlandの特徴は、ビール造りを芸術表現として捉えるアプローチにあるようだね。多くのブルワリーが効率を重視する中、Floodlandは時間をかけた発酵や熟成、自然の変化を大切にしているよ。「フィールドブレンド」という異なる樽のビールをブレンドする手法も特徴的だね。
テイスティングノート(以下、全て筆者の個人的な感想です)
SEN XXVIの構成要素分析
このセクションでは、SEN XXVIを構成する主要素(モルト、ホップ、酵母、熟成方法)について視覚的に解説します。これらの要素が織りなす複雑な相互作用が、このビール独自の味わいプロファイルを生み出しています。
モルト構成とフレーバー分布(筆者推定)
※色の分布は原料の使用割合と風味の強さを筆者が推定したものです
Crystalホップのプロファイル
- フローラル(花のような)
- ウッディ(木のような)
- スパイシー(シナモン、ナツメグ)
- 軽い柑橘系
- タンニンによる繊細な渋み
- 精油成分による滑らかさ
- 植物性ポリフェノールの複雑さ
- 酵母との相互作用
酵母由来フレーバープロファイル(筆者の感じ方)
※数値が外側に向かうほど各特性が強いことを示します
樽熟成のタイムラインと風味変化(推定)
ルネちゃん
複雑すぎてよくわからないワン…一言でこのビールの特徴を言うと?
りほ
一言で言うと「時間をかけた職人芸」かな。材料選びから15ヶ月以上の製造期間を経て、水のように自然に体に溶け込む軽やかさと、飲むほどに発見のある複雑さを兼ね備えたビールだよ。特別な日に、ゆっくり味わうのにぴったり。
アロマ(香り)
私が感じた香りの特徴は、フローラルな香りが主体となっており、ブレッド酵母由来のファンキーな香りが奥深さを与えている点です。ほんのりとしたチェリーのような甘さと、レモンのような柑橘系の爽やかさも感じられました。個人的に印象的だったのは、小麦由来のスパイシーな香りとCrystalホップの華やかな香りが美しいバランスを保ち、複雑な香りのプロファイルを作り出している点です。グラスに注いだ瞬間から、上品で洗練された香りが立ち上りました。
アロマの構成要素(筆者の印象)
※バーの長さは各香り要素の強さを筆者の主観で表現しています
外観
色調とSRM推定値
瓶の上部と下部の比較(筆者観察)
泡立ち(筆者観察)

私が確認した外観では、瓶の上部はクリアで明るい黄金色が特徴的でした。一方、瓶の下部は酵母が濃く沈殿しており、かなり濁った外観となっています。瓶の下部はまるで異なるビールのように見えるほど違いがありました。泡立ちはしっかりとしていて、熟成ビールにしては驚くほど長く泡が持続しました。これはボトルコンディショニングが成功している証拠かもしれません。
フレーバー(味わい)
風味の層と相互作用(筆者の感じ方)
※口に含んだ瞬間から飲み込んだ後までの風味の変化を層で表現しています
味わい特性の強度(筆者評価)
私が最も印象的に感じたのは、口当たりが水のように軽やかで優しい点です。小麦由来のスパイシーな香りが口に広がり、ブレッド酵母とCrystalホップとの美しいバランスを感じました。口の中でうがいをすると、炭酸と酵母のファンキーさとホップの華やかさが舌の上を踊り、優しい口当たりとビールらしい複雑さが融合しているように感じました。梅や紫蘇のような繊細な酸味も感じられましたが、あくまで控えめで調和のとれた印象でした。ファンキーさとホップのフローラルなニュアンスが混じり合って桃のような風味も感じられ、複雑な味わいを楽しむことができました。
ルネちゃん
口当たりが水のようって不思議だワン!普通のビールとどう違うの?
りほ
通常のビールは炭酸やアルコール感からくる「ビールらしさ」を強く感じるものが多いんだ。でもSEN XXVIは長期熟成と繊細な発酵プロセスによって、まるで水のように体に自然に溶け込むような優しい口当たりに仕上がっているよ。水のように軽やかなのに、うがいをすると複雑な風味が現れる対比が、このビールの最大の魅力だと思う。
ボディ(口当たり)
私が体験したボディ感は驚くほど軽やかで、「水のよう」という表現がぴったりでした。しかし単に薄いわけではなく、繊細さの中に複雑な風味がしっかりと感じられます。瓶の下部の酵母が濃く沈殿している部分は、上部と比べて濃厚な味わいでしたが、それでも喉越しは終始優しく穏やかでした。ファンキーさと優しさのバランスが絶妙で、熟成の長さを感じさせる深みがありました。このような軽やかさと複雑さの両立は、細部までの妥協のないアプローチの賜物ではないかと思います。
味わいプロファイル(筆者評価)
味わい要素 | 強度(1-5) | 特徴(筆者の感じ方) |
---|---|---|
フローラル感 | 4/5 | Crystalホップによる花のような優雅な風味 |
酵母の個性 | 4/5 | ブレッド酵母のファンキーさと複雑さ |
果実味 | 3/5 | チェリー、レモン、桃のような繊細な風味 |
酸味 | 2/5 | 梅や紫蘇を思わせる控えめな酸味 |
小麦由来の風味 | 3/5 | スペルト小麦によるスパイシーなニュアンス |
バランス | 5/5 | すべての要素が優美に調和 |
全体的な印象
私にとってSEN XXVIは、Floodland Brewingの醸造哲学と職人的な技術が見事に表現された芸術的なビールでした。水のように軽やかな口当たりと複雑な発酵風味のバランスが特筆すべき点で、単なる飲み物を超えた体験を提供してくれました。長期熟成によって得られる深みと繊細さ、そして全花のCrystalホップが与える優雅なフローラル感が見事に調和していると感じました。瓶の上部と下部で異なる表情を持ちながらも、一貫した質の高さを保っているのは、Adam Paysseの緻密な醸造へのこだわりの証なのかもしれません。
総合評価
おすすめのペアリング
SEN XXVIのような繊細で複雑な風味を持つセゾンには、以下のような料理が特に相性が良いでしょう。
おすすめペアリング(筆者提案)
ルネちゃん
セゾンって料理と合わせるのにいいビールなんだね!どうして?
りほ
そうなんだよ!セゾンは「食卓のワイン」とも呼ばれることがあるくらい料理と相性がいいんだ。その理由は、軽やかな口当たりと程よい炭酸感で味覚をリセットする効果があり、複雑なフレーバーが様々な料理の風味と調和しやすいからだよ。特にSEN XXVIのような繊細なセゾンは、お互いの良さを引き出し合う組み合わせが楽しめると思う。
Floodland Brewing入手ガイド
Floodland Brewingのビールは非常に希少で、入手方法も一般的なビールとは異なります。以下に公開されている入手方法を説明します。(※情報は変更される可能性がありますので、最新情報は公式サイトでご確認ください)
Floodland Brewingのビール入手方法
メーリングリストシステムとボトルリリース
Floodland Brewingのビールを入手するには、公式サイト(floodlandbrewing.com)のメーリングリストに登録する必要があります。公開情報によると、オンラインボトル販売は奇数月(1月、3月、5月、7月、9月、11月)ごとに行われ、各リリースは通常3〜4本のボトルセットで、シアトルのフレモント地区にある醸造所での受け取りが必要です。「Oakworks」と呼ばれるボトルクラブもありますが、一般の人でもボトルを購入することは可能とのことです。
公式サイトを訪れる公開情報によれば、Floodlandのボトルは、シアトルの「TOMO」、オーカス島の「Houlme」、ロペス島の「Ursa Minor」などの特定のレストランでも提供されているとのことです。また、時折インスタグラムで告知されるドラフトイベントでも飲むことができるようです。記事作成時点(2025年4月)では、Floodlandはタップルームを運営しておらず、醸造所での直接購入はできないとされています。リリース後のピックアップに来られない場合は、次回のリリースまで保管してもらうことは可能ですが、それ以上は保管できないとのことです。
アメリカのクラフトビール探訪記
現在シアトル在住の筆者が、本場アメリカとカナダのクラフトビールシーンを巡る旅の記録を公開しています。ロサンゼルスの人気醸造所からポートランドの隠れた名店、バンクーバーのユニークなタップルームまで、北米各地のブルワリー訪問レポートを発信中。地元でしか味わえない限定ビールや醸造家との対話など、北米のビール文化を深掘りしたコンテンツはこちらのカテゴリーページからご覧いただけます。
https://rihobeer.com/category/beer/brewpub/usa
日本のクラフトビール探訪記
2024年まで日本在住だった筆者が、全国各地のクラフトビールシーンを巡る旅の記録を公開しています。北は北海道から南は九州まで、日本全国の個性豊かなブルワリーを訪問。蔵元直営のタップルームから地域に根差したビアパブまで、日本のクラフトビール文化を体験するレポートを発信中。季節限定醸造や地元食材を活かしたユニークなビール、杜氏との対話など、日本のクラフトビールの魅力を深掘りしたコンテンツはこちらのタグページからご覧いただけます。
https://rihobeer.com/tag/japan-ja/
よくある質問
Q: Floodland Brewingのビールはどこで購入できますか? |
A: 公式情報によれば、Floodlandのビールは主にメーリングリストを通じたオンライン予約と醸造所での受け取りシステムで販売されているとのことです。公式サイト(floodlandbrewing.com)でメーリングリストに登録し、奇数月のセールをお待ちください。また、シアトルの一部レストラン(TOMO等)でも提供されているようです。最新の販売情報は公式サイトでご確認ください。 |
Q: セゾンスタイルのビールとは何ですか? |
A: セゾンはベルギーのワロン地方発祥の農場地ビールで、複雑な酵母の特徴、穀物の風味、軽快なボディ、そして控えめなホップの苦みが調和したスタイルです。伝統的には夏の間の仕事のために春に醸造され、喉の渇きを潤すためのビールでした。現代のセゾンは、クラフトブルワリーによって様々なバリエーションで解釈されています。 |
Q: 750mlボトルのビールはどのくらいの期間保存できますか? |
A: SEN XXVIの場合、推奨消費期限は2028年春までとなっています。Floodlandのビールは長期熟成を前提に作られており、適切な条件下(冷暗所)で保存すれば数年間は風味が発展し続けるとされています。ただし、最も新鮮な状態で楽しみたい場合は、購入後1年以内の消費をお勧めします。 |
Q: ニュートラル樽とは何ですか? |
A: ニュートラル樽(中性樽)とは、数年間使用した後のオーク樽で、もはやビールやワインに強い風味やタンニンを与えなくなったものを指します。醸造業界では、これらの樽は緩やかな酸素供給と微生物環境によって複雑な発酵を促進するために使用されることがあります。 |
参考情報
このブログ記事作成にあたり、以下の情報源を参考にしました。最新かつ正確な情報提供に努めていますが、情報は変更される可能性があります。
- Floodland Brewing公式サイト: https://www.floodlandbrewing.com/
- Untappd – Floodland Brewing: https://untappd.com/w/floodland-brewing/379455
- Untappd – Top Rated Breweries: https://untappd.com/brewery/top_rated
- Craft Beer & Brewing – Breakout Brewer: Floodland: https://beerandbrewing.com/breakout-brewer-floodland/
- Finding Beer – Best Breweries in United States: https://finding.beer/best-breweries/united-states
- Craft Beer & Brewing – Best in Beer Readers’ Choice: Your Favorite Breweries in 2024: https://beerandbrewing.com/best-in-beer-readers-choice-your-favorite-breweries-in-2024/
最終更新日: 2025年4月21日
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