オレゴン州アストリア。コロンビア川が太平洋へ注ぐ港町の一角に、看板もひかえめなナノブルワリーがあります。Obelisk Beer Co.(オベリスク・ビア・カンパニー)——モットーは「Slow Beer, Good Times」[1]。この日まず一杯目に選んだのはラガーでした。爽快なのに奥に深みがあって、繊細で、すっと喉の奥へ落ちていきます。それでいて確かなコクがあり、最後まで飽きずに飲めました。「急がない、こだわる」という醸造所の姿勢が、この一杯のラガーに素直に出ていました。
はじめに|Fort George出身者が開いた、また通いたくなる醸造所
こんにちは!クラフトビール愛好家のりほです。今回はオレゴン州アストリアの醸造所、Obelisk Beer Co. のレポートをお届けします(現地取材は2026年春、記事公開は2026年6月)。じつはアストリアに最初に足を運んだときも、同じくFort George Brewery出身の立花さんに教えていただいてこの店を知りました。今回で二回目になります。前回「またゆっくり飲みに来たい」と思っていた場所に、こうして戻ってこられたのがうれしい一日でした。
Obelisk Beer Co. は、2022年にアストリアで産声をあげた醸造所です[2]。創業したのは Dave Coyne と Nathan Lampson の二人。どちらもアストリアの名門 Fort George Brewery の出身で、Dave Coyne は R&D 醸造とバレル(樽熟成)プログラムを統括してきた中心人物でした[2]。彼が Fort George 時代に手がけた「Matryoshka(マトリョーシカ)」ロシアン・インペリアル・スタウトのシリーズは、太平洋岸北西部で名を知られた樽熟成ビールのひとつに育っています[2]。
ホップくん
Fort Georgeのバレルプログラムを回してた人が独立したって、それだけでワクワクするホプ!樽の扱いを知り尽くした造り手のラガーは、シンプルに見えて奥が深いんだホプ。
タップルームは、飾りすぎないミニマルな空間。港町らしく、肩の力の抜けた雰囲気です。ゆっくり腰を据えて飲むのにちょうどいい場所でした[6]。建物にも物語があります。ここはかつて青果卸の「Columbia Fruit and Produce」が入っていた倉庫で、さらにさかのぼると1940年代には Blitz-Weinhard のビール卸の拠点だったといいます[2]。ビールの流通を担っていた場所が、いまは自分たちでビールを醸す場所になっている。そんな巡り合わせも、この土地で飲む一杯を少しだけ味わい深くしてくれます。
Obelisk Beer Co. は、2024年のグレート・アメリカン・ビア・フェスティバル(GABF)でゴールドメダルを獲得しています。受賞したのはコラボレーション部門です。ワシントン州スノコルミーの No Boat Brewing Company と共同醸造したニュージーランド・スタイルIPA「Twenty-Fold Sword」が対象でした[3]。開業からわずか数年で、全米最大級のビアコンペで金賞を得たのは、造り手の実力を裏づける結果と言えます。
また、創業者 Dave Coyne は Fort George 時代にバレルプログラムを統括していました(前述の「Matryoshka」シリーズを生んだプログラムです)。そこで培った樽熟成の技術は、Obelisk のラインナップにも受け継がれています。Obelisk 自体も、開業前後にオレゴン・ワシントン各地の醸造所と十数種のコラボを重ねてきました[2]。