Fort George Brewery + Public House(アストリア)訪問記|WBC×GABF二冠のPNW聖地
beer
2026.05.01
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カリフォルニアロードトリップを終え、太平洋岸を北上してたどり着いたのが、オレゴン州の歴史ある港町・アストリア。コロンビア川の河口にあるこの町には、Pacific Northwest(PNW)クラフトビールシーンを牽引してきた名門が居を構えています。それが Fort George Brewery + Public House。1ブロックまるごとがブルワリーとレストランになっている広大な敷地で、湾岸から吹く潮風の中で飲むPNWスタイルのビールは、旅の終盤を締めくくるのに最高の一杯でした。
今回は2回目の訪問で、明日にはまた立ち寄る予定です。City of Dreams Pale Ale が 2024 World Beer Cup 金賞に加えて 2025 GABF 金賞も獲得した、いわば「ジューシーIPA最強候補」のブルワリーで、行くたびに新しい発見があります。
WBC 2024 + GABF 2025 二冠の Juicy or Hazy Pale Ale。シトラス・トロピカルフルーツの華やかなアロマに、ジューシーで瑞々しい飲み口。Fort George を一杯で語るならこのビール一択です。
得意分野: Juicy/Hazy IPA × ペールエール × チョコレートビール
Fort George Brewery の歩みと醸造哲学
Fort George Brewery + Public House がオレゴン州アストリアに誕生したのは、2007年3月のことです。共同創業者は、地元アストリア出身の Chris Nemlowill さんと、彼の醸造の師にあたる Jack Harris さんの2人でした。Nemlowill さんは Clatsop Community College を経て Southern Oregon University を卒業したのち、隣町キャノンビーチのブリューパブ「Bill’s Tavern」で Harris さんのもとに弟子入りし、醸造の腕を磨いた経歴の持ち主です。建物のオーナーが「ここにブルワリーとベーカリーが入ったら」という構想を抱いて2人にスペースを貸し出したことが、すべての始まりでした。2005年に空き物件を借り受けた2人は、バージニアで見つけた8.5バレルの醸造設備「Sweet Virginia」をフラットベッドトラックで自ら運び込み、2006年に設置します。パブの奥に据えたこの小さな仕込み窯から、Fort George の歴史は動き出しました。
ブルワリーが居を構えるのは、ただの空き店舗ではありませんでした。この一帯は1811年に毛皮商人 John Jacob Astor が交易拠点「Fort Astoria」を築いた、アメリカ西海岸における初期のアメリカ人入植地のひとつとして知られています。1812年戦争のさなかにイギリス海軍の艦船が占拠し、国王ジョージ3世に因んで「Fort George」と改称された歴史が、そのままブルワリーの名に受け継がれました。創業時の仕込み窯が置かれた「Fort George Building」は、公式の沿革によれば1924年に建てられた建物で、かつては自動車の整備工場として使われていたといいます。歴史が幾重にも重なる一角で醸されるという背景が、この醸造所の個性を形づくっています。
スタートは、パブの奥に据えたわずか8.5バレルの設備という小さな規模でしたが、ビールは作るそばから売れていきました。開業から3年と経たないうちに、2人はテキサスの St. Arnold’s から30バレルの仕込み設備を譲り受け、隣接する1921年築の「Lovell Building」を含む街区一帯を買い取って規模を広げます。さらに2010年代の末には、かつて缶詰工場(Astoria Warehousing)だった水辺の建物に大規模な生産施設を構えるに至りました。創業時の設備「Sweet Virginia」をバージニアから運び込む道中、ネブラスカ州の畑で竜巻(ボルテックス)に設備ごと吹き飛ばされそうになった逸話が名の由来になったという看板IPA「Vortex IPA」をはじめ、Fort George のビールは PNW(パシフィック・ノースウエスト)のクラフトシーンを語るうえで欠かせない存在へと育っていきます。16オンス缶でのパッケージングにいち早く取り組んだ、この地域の缶ビールの先駆者の一人でもあります。
Fort George が一貫して掲げてきたのは、family-owned(家族経営)らしい地域との結びつきと、サステナビリティへのこだわりです。「You. Us. Beer.」というタグラインが示すとおり、できる限りオーガニックを意識し、環境に責任を持ちながら、地域に深く根を張って、持てる力を尽くして良質なクラフトビールを醸すという姿勢を大切にしてきました。2つの研究開発(R&D)用ブルワリーを併設し、年間およそ100種類ものユニークなビールを生み出す実験精神も、この醸造所ならではの魅力です。
その実力は近年、世界的に権威ある品評会でも証明されています。ヘイジー系ペールエール「City of Dreams Pale Ale」は、2024年の World Beer Cup で Juicy or Hazy Pale Ale 部門の金メダルに輝き、翌2025年の Great American Beer Festival(GABF)でも同じ部門で金メダルを獲得しました。1ブロックまるごとを擁する醸造拠点に加え、志を同じくする200を超えるブルワリーやワイナリーの製品を扱う流通事業も手がけるなど、Fort George は今やオレゴンを代表するブルワリーの一つとして、確かな存在感を放っています。