クラフトビール愛好家のりほです。今回は、ヘイジーIPA好きなら一度は聞いたことがある「ダブルマッシュ」について徹底的に解説するよ。Brujosの「2x Mash」やFidensの醸造手法、Tree HouseやMonkishまで、人気12ブルワリーの手法を比較しながら掘り下げていくね

ダブルマッシュは「味を良くする魔法の技法」だと思われがちだけど、実は設備の制約を克服する実用的な手段なんだホプ!ブルワリーごとに意味が全然違うから、しっかり整理して解説するホプ!
このガイドで使う用語
醸造用語は馴染みがないと読み進められないので、最初に整理しておきます。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| マッシュ(糖化) | 砕いた麦芽をお湯に浸して、穀物のデンプンを糖に変える工程。ビールの「甘さの素」を作る作業 |
| 麦汁(ばくじゅう) | マッシュで得られた甘い液体。煮沸してホップを加え、酵母で発酵させるとビールになる |
| マッシュタン(糖化槽) | マッシュを行う容器。お湯と穀物を入れる大きな鍋 |
| ケトル(煮沸釜) | 麦汁を沸騰させてホップを投入する容器 |
| ファーメンター(発酵タンク) | 酵母を入れてビールを発酵させるタンク |
| OG(初期比重) | 発酵前の麦汁にどれだけ糖が溶けているかの数値。高いほどアルコール度数が高くなる |
| ABV | アルコール度数。ABV計算機で算出できる |
| ドライホップ | 煮沸後や発酵中・発酵後にホップを投入し、苦みではなく香りを付ける技法。DDHは2回ドライホップすること |
| フレークドオーツ/ウィート | 加熱処理して平たく潰したオート麦や小麦。タンパク質が多く、ビールに厚みと濁りを与える |
| bbl(バレル) | 醸造の単位。1バレル=約117リットル=大きい樽2本分 |

用語が分かれば、ここからの話がグッと理解しやすくなるホプ!まずはダブルマッシュの「3つの意味」から解説するホプ!
「ダブルマッシュ」は一つの意味ではない — 3つのパターン
「ダブルマッシュ」という言葉は、ブルワリーや文脈によって全く異なる手法を指します。大きく分けて3つのパターンが存在します。
パターン1:ダブルバッチ(2回マッシュして麦汁を合わせる)

穀物を2回に分けてそれぞれ普通にマッシュし、得られた麦汁をケトルに合わせてから煮沸する方法だホプ。2回目のマッシュにも普通の水を使うのがポイント。目的は「発酵タンクを満タンにする」か「マッシュタンに穀物が入りきらない」かのどちらかだホプ!
クラフトブルワリーではマッシュタンより発酵タンクの方が2〜4倍大きい設計が一般的なので、通常の比重のビールでも日常的に行われています。ProBrewerフォーラムでは「5bblのマッシュタンで10bblの発酵タンクを満たすために毎回ダブルバッチしている」という証言もあります。これが最も一般的な「ダブルマッシュ」の意味です。
パターン2:リイテレーテッドマッシュ(麦汁で次の穀物をマッシュする)

こっちは全く違う技法だホプ!1回目のマッシュで得た麦汁を水の代わりに使って、2回目の穀物をマッシュする方法。つまり「すでに糖が溶けた液体」に新しい穀物を加えて、さらに糖を抽出するんだホプ!
こうすると、体積(量)を増やさずに比重(濃さ)だけを高くできます。Brew Your Own誌のChris Colbyが2007年12月号で体系化した手法で、「シーケンシャルマッシュ」「ポリガイル」とも呼ばれます。
Tombstone Brewing Companyはこの手法で15.5% ABVのインペリアルスタウトを醸造した記録があり、醸造に18時間、660ポンドのバーモント産メープルシロップを使用したと公式ブログで語っています。
パターン1が「量を増やす」のに対し、パターン2は「量を変えずに濃さを上げる」。この違いが超重要なんだよね
パターン3:アジャンクトのダブルマッシュ(大手ラガーの文脈)
醸造学の教科書では、メインのモルトマッシュとは別にコーンやライスなどの副原料を煮沸する「シリアルマッシュ」を行い、両者を合わせる手法もダブルマッシュと呼ばれます。バドワイザーなどのアメリカンライトラガーで使われますが、ヘイジーIPAとは無関係です。
Brujosの「2x Mash」はどれ? — 実例で理解する

Brujos Brewingが「2x Mash」と表記する場合、ABV 12%前後のクアドルプルIPAで使っているホプ。「La Dama Caries」(12% ABV、Citra + Eclipse)や「Sr. Apostata」(12.1% ABV)がその例だホプ!
Brujosは2024年にHammer & Stitch Brewingの15bbl設備を引き継いでポートランドで開業したブルワリーです。通常のIPAやダブルIPAでは「2x Mash」の表記がなく、ABV 10%を超えるクアドルプルIPAでのみ使われています。
12%という極端な比重を達成するには単にバッチを2回に分けるだけでは足りず、パターン1(穀物が入りきらない)とパターン2(麦汁で再マッシュして濃さを上げる)の両方の要素を含んでいる可能性が高いでしょう。
Brujosの「2x Mash, 2x DH」は「マッシュを2回、ドライホップを2回」って意味。それだけ穀物もホップも大量に使っているリッチなビールってアピールなんだよね
シングルマッシュ vs ダブルマッシュ:味わいの違い

結論から言うと、ダブルマッシュ自体は味にほとんど直接的な影響を与えないホプ。ただし間接的にいくつかの違いが生まれることがあるホプ!
| シングルマッシュ | パターン1(ダブルバッチ) | パターン2(リイテレーテッド) | |
|---|---|---|---|
| 目的 | 通常の醸造 | 量を増やす(発酵タンクを埋める) | 濃さを上げる(高ABV) |
| ABVへの影響 | 基準 | 変わらない(同じレシピ×2) | 大幅に上がる |
| 味わいの違い | 基準 | ほぼ変わらない | ボディが厚く、甘みが残りやすい |
| 醸造効率 | 通常(70%前後) | ほぼ同じ | 大幅に低下(50〜65%) |
パターン1はシングルマッシュと味がほぼ同じです。同じレシピを2回繰り返して麦汁を合わせるだけなので、出来上がるビールに違いはほとんど出ません。
パターン2は味が変わります。すでに糖が溶けた麦汁で新しい穀物をマッシュするため、発酵しきれないデキストリンが増え、ボディが厚く甘くなりやすくなります。また、酵母にとっての環境が過酷になり、フーゼルアルコールやエステルが増える傾向があります。
主要ヘイジーIPAブルワリー12社の醸造手法
ここからが本題!世界のトップヘイジーIPAブルワリー12社が実際にどんな手法で醸造しているか、リサーチした結果をまとめるよ

重要なのは、ダブルマッシュ(リイテレーテッド方式)を公式に使用していると確認できたのはBrujosのみだということだホプ。ほとんどのブルワリーは別の要素で味を決めているホプ!
| ブルワリー | 所在地 | 設備規模 | 穀物の特徴 | ドライホップ手法 | 最大の武器 |
|---|---|---|---|---|---|
| Fidens | NY州オールバニ | 7bbl | — | 発酵完了後にDH | ホップ選別 + 酸素管理 |
| Brujos | OR州ポートランド | 15bbl | — | 2x DH(高ABVのみ) | 2x Mash(10%超のみ) |
| Other Half | NY州ブルックリン | 複数拠点 | オーツ50%超 | DDH/TDH標準 | 極端なオーツ比率 + ラクトース |
| Tree House | MA州チャールトン | 60bbl | 議論あり* | 低温ワールプール (42°C) | 水質 + ホップ飽和 |
| Trillium | MA州カントン | 30-50bbl | 小麦20% | 90%を後投入/DH | 低温マッシュ (149°F) + 温DH |
| Monkish | CA州トーランス | 15bbl | オーツ | 発酵完了後のみ | ホップの個性を際立たせる技術 |
| The Alchemist | VT州ストウ | 15bbl×4 | Pearl Malt基盤 | 1回の大量投入、4-5日 | Conan酵母 + 煮沸ホップなし |
| Equilibrium | NY州ミドルタウン | 20bbl | 可変(100%2-Row含む) | 約3 lbs/bbl + 数学モデル | MIT水質化学博士の科学的アプローチ |
| Parish | LA州ブルサード | — | 非公開 | DDH Ghost: 8+ lbs/bbl Citra | 極端なCitra投入量 |
| The Veil | VA州リッチモンド | 15bbl | 小麦ベース | 4+ lbs/bbl | 小麦ベース + クールシップ |
| Foam Brewers | VT州バーリントン | 7bbl | 地元産オーツ・小麦 | — | テロワール(地元穀物) |
| Hill Farmstead | VT州グリーンズボロ | 15bbl | シンプル(モルト+カラメル) | — | エレガンス + 生産量制限 |
* Tree Houseが商業ビールにフレークドグレインを使用しているかは議論があります。一部のソースでは、濁りとボディはプロセス(水質、酵母、ホップ量)によるものとされています。
Fidens Brewing — 小さな設備からの芸術品

Fidensは2019年にNY州コロニーで4バレルという非常に小さなシステムで開業。現在は7バレルに拡張し、オールバニのWarehouse Districtにも拠点を構えているホプ!
Fidensの味わいを特徴づけているのはダブルマッシュではなく、以下の要素です。
- ホップの産地まで出向いて手選別:Citra、Galaxy、Nelson Sauvinなどを厳選
- 発酵完了後にドライホップ:60°Fに「ソフトクラッシュ」してから2日に分けてDH。よりクリーンでホップの香りが際立つ仕上がりに
- 水質の細かい調整と酸素の徹底排除
- マッシュ温度は150〜155°F。トリプルIPAでは低温でマッシュしドライな仕上がりに
なお、共同創業者のSteve Parkerは現在運営側に移行し、Anthony Danaがヘッドブルワーを務めています(2022年頃〜)。Sapwood Cellarsとのコラボ「3S4MP」ではOmega Yeastのチオール化酵母Cosmic Punchを使用した実験的ビールも醸造しています。
Other Half Brewing — オーツの王者

Other Halfは2014年にブルックリンで創業し、現在はマンハッタン、バッファロー、フィラデルフィア、ワシントンD.C.など8拠点以上に拡大した中〜大規模ブルワリーだホプ!
Other Halfの味の秘密は:
- 極端に高いオーツ比率:「Dream in Green」では穀物全体の50%以上がオーツ。Daydreamシリーズのクリーミーで厚い口当たりの鍵
- ラクトース(乳糖):Oat Cream IPAシリーズでは酵母が食べられない糖を少量加え、甘みとボディを強化
- 英国系酵母:Wyeast 1318 London Ale IIIでフルーティな香りとヘイズ安定性を実現
- 大量かつ多段のドライホップが標準
Tree House Brewing — 低温ワールプールの革命児

Tree Houseは60バレルのドイツ製ブルーハウスを持つ大規模ブルワリー。年間4万バレル以上を生産し、マサチューセッツ州最大のブルワリーの一つだホプ!
Tree Houseの特筆すべき技法は42°C(108°F)という非常に低い温度でのワールプールです。通常のワールプールは75〜85°Cで行いますが、この低温では揮発性のホップアロマ成分が蒸発せず、より多くの香りがビールに残ります。
水質は塩化物約200ppm、硫酸塩約100ppm(2:1の比率)で、柔らかい口当たりを実現。マッシュ温度は154〜156°Fで60分です。
Trillium Brewing — 低温マッシュ+温かいドライホップ
Trilliumの共同創業者JC Tetreaultは多くのビールを149〜150°Fという低いマッシュ温度で醸造しています。これにより発酵性が高まり、ドライな仕上がりでホップの香りが際立ちます。

Trilliumの最大の特徴はホップの90%を後投入またはドライホップで使うことだホプ。さらに、ドライホップの温度をだんだん上げていったら「ビールの香りも味も良くなり、見た目もどんどんクレイジーになった」とTetreaultは語っているホプ!
Monkish Brewing — ホップの個性を「聴く」醸造
Monkishのヘンリー・グエンは元々ベルギースタイル専門で、「No MSG, No IPA」の看板を掲げていたんだって。2016年にIPAを初リリースしてからHazy IPAの西海岸リーダーに
Monkishの最大の特徴は発酵完了後にのみドライホップすること。グエンは「早くドライホップすると、ごちゃまぜのホップスープになる」と語っています。Galaxy + Citraの組み合わせを「魔法のようだ」と評し、個々のホップの個性が読み取れるクリアな風味表現を追求しています。
The Alchemist — Heady Topperの伝説

The Alchemistのジョン・キミッチは、ヘイジーIPAブームのはるか前から未濾過のホップフォワードDIPAを造っていた先駆者だホプ!Heady Topper(8% ABV)の秘密を見てみるホプ!
- Thomas Fawcett Pearl Maltがベース(独特のブレッディな風味)
- 煮沸中のホップ投入なし — CO2ホップエクストラクトのみで苦味付け
- 1回の大量ドライホップを4〜5日間。「9ポンド/バレル!なんて見ると、馬鹿げている」とキミッチは語る
- 伝説のConan酵母(VPB1188)— アプリコットとトロピカルフルーツのエステルを生む
- 4つの15bblバッチを60bblタンクにブレンド — これはダブルバッチ(パターン1)の典型例
Equilibrium Brewery — MIT博士の科学醸造
共同創業者のPete OatesはMITで水質化学の博士号を取得。元々ハドソン川の浄化研究をしていた知見を「逆転」させてビール醸造に応用しています。
ホップの投入量は約3 lbs/bblで、数学モデルを使って醸造プロセスの変更結果を予測。「Fractal Universe」では100%2-Rowという極めてシンプルな穀物配合でホップの変数を分離する実験も行っています。
Parish Brewing — Citraの極限

Parish Brewingの「Ghost in the Machine」は、DDH版でCitraを8 lbs/bbl以上投入する、商業ビールの中でも最も攻撃的なドライホップ率の一つだホプ!
Andrew Godleyは温度実験(70°F、60°F、50°F、38°F)でCascadeホップの抽出を比較。温かいほどグレープフルーツの皮のようなアロマに、冷たいほど生のホップの個性が残ることを発見し、「これがホップジュースの作り方。酵母にやらせるんだ」と語っています。
その他の注目ブルワリー
The Veil(リッチモンド)は小麦ベースのMaster Shredderが看板。15bblのクールシップも所有し、ヘイジーIPAと自然発酵の二刀流。Foam Brewers(バーリントン)は7bblの極小システムで地元バーモント産の穀物にこだわるテロワール志向。Hill Farmstead(グリーンズボロ)はシャウン・ヒルがRateBeerで複数年「世界一」に選ばれた醸造所で、シンプルな穀物配合とエレガンスな味わいを追求しています。
小規模ブルワリーでダブルマッシュが必須になる理由

ここまで「味の技法ではなく設備上の手段」と説明してきたけど、小規模ブルワリーがヘイジーIPAを造る場合、ダブルマッシュは事実上避けて通れないホプ!その理由を具体的に説明するホプ!
ヘイジーIPAは穀物を大量に使うスタイル
ヘイジーIPAの濁り・クリーミーな口当たり・フルボディを生むために、穀物全体の20〜50%をフレークドオーツやフレークドウィートが占めることがあります。これらは通常の麦芽より嵩が大きく、水を吸いやすいため、マッシュ全体の体積が膨れ上がります。
つまり、同じABVのビールを造る場合でも、ヘイジーIPAは通常のIPAより多くのマッシュタン容量を必要とするってことだね
具体例:7バレル設備のシナリオ
| 設備 | 容量 |
|---|---|
| マッシュタン | 7バレル(約820リットル) |
| ケトル | 7バレル |
| 発酵タンク | 15バレル(約1,760リットル) |
このブルワリーがABV 8.5%のダブルヘイジーIPAを15バレル分造りたい場合、約350〜400kgの穀物が必要ですが、1回のマッシュで処理できるのは約180〜200kg。ダブルマッシュで2回に分けて糖化し、麦汁をケトルに合流させることで解決します。

Fidensが4バレルシステムから8.5%のダブルIPAを量産できたのも、ダブルバッチ(パターン1)があったからこそだホプ。The Alchemistも15bblバッチを4回繰り返して60bblタンクを満たしているし、Foam Brewersも7bblで醸造してから別拠点の発酵タンクに移送しているホプ!
「スタックマッシュ」問題
ヘイジーIPAのレシピはオーツや小麦が多いため、マッシュが粘り気のあるお粥状になりやすく、麦汁が流れなくなる「スタックマッシュ(詰まり)」の原因になります。ダブルマッシュで穀物を2回に分けることで、1回あたりの穀物量を減らし、このリスクも軽減できます。
ダブルマッシュの代償:時間・コスト・タンク占有
ダブルマッシュには明確なデメリットがあるんだよね。好き好んで選ぶ技法ではなく、「やらなければ造れないから仕方なくやる」というのが現実
- 醸造時間がほぼ倍 — 準備・清掃含めて2〜2.5時間以上追加。朝4時に始めても煮沸が終わるのは午後に
- タンク占有時間が延びる — マッシュタンが1つの小さなブルワリーでは、1バッチに丸一日
- 人件費が増える — 温度管理や穀物の投入・排出を手作業で2回分
- 醸造効率が下がる — 通常70%の効率が60〜65%程度に低下。原材料費が上がる

つまりダブルマッシュは小規模ブルワリーが高比重ビールを造るために払う「税金」のようなものだホプ。設備を大きくすれば解消できるけど、設備投資には大きな資金が必要だホプ!
ホップの香りとアルコール度数の科学
高ABVのビールがフルーティに感じる理由

ここからちょっと科学的な話になるけど、大事なポイントだホプ。高ABVのヘイジーIPAが低ABVのものよりフルーティに感じるのには、ちゃんとした理由があるホプ!
アルコールがホップオイルの溶媒として機能します。ホップオイル(リナロール、ゲラニオール、ミルセンなどの精油成分)は水に溶けにくいですが、エタノールには溶けやすい性質があります。
アメリカンホップに豊富なホップオイル
ヘイジーIPAで多用されるアメリカンホップ(Citra、Mosaic、Simcoe、Amarillo、Centennialなど)は、ヨーロッパ系の品種と比べてホップオイルの含有量が非常に多いのが特徴です。
| ホップオイル成分 | 香りの特徴 | 多い品種 |
|---|---|---|
| ミルセン | マンゴー、松脂、ハーブ | Citra(60-65%)、Simcoe、Cascade |
| リナロール | フローラル、ラベンダー、柑橘 | Citra、Mosaic、Nelson Sauvin |
| ゲラニオール | バラ、ゼラニウム、柑橘 | Mosaic、Centennial、Amarillo |
| フメネン | ウッディ、スパイシー | Simcoe、Columbus、Chinook |
| カリオフィレン | 黒胡椒、スパイシー | Simcoe、Columbus |
たとえばCitraホップはオイル全体の60〜65%がミルセンで占められており、これがCitraの強烈なトロピカルアロマの源です。ヘイジーIPAが大量のドライホップで爆発的なフルーツ香を出せるのは、アメリカンホップのオイル含有量の多さに依るところが大きいです。
詳しいホップ品種ごとのオイル組成はホップ辞典で確認できます。
Cocuzzaらの研究(2022年、BrewingScience誌)では、4段階のABV(0.5%、2.5%、5.5%、10.5%)でドライホップの抽出を比較したところ、アルコール度数が上がるほどモノテルペン・セスキテルペンの移行量が増加することが確認されました。Brewers Journalも「5〜8%のABV帯であれば、ドライホップからのミルセン抽出に十分なエタノールが存在する」と報じています。
さらに、高比重・高タンパクのビールは粘度が高く、揮発性の香り成分が液中に留まりやすくなります。Castro & Ross(2013年、ASBC Journal)の研究では、高タンパク・高炭水化物のビールは「ドライホップのフレーバーが顕著に強い」が、逆に「揮発性化合物がタンパク質に結合されるため、グラスから立ち上るアロマは低下する」とされています。
チオールとホップオイルは別物

ここは混同されやすいから、しっかり整理するホプ!
| ホップオイル(精油) | チオール | |
|---|---|---|
| 含まれる成分 | リナロール、ゲラニオール、ミルセンなど約1,000種類 | 3MH(グレープフルーツ)、3MHA(パッションフルーツ/グアバ)、4MMP(ブラックカラント) |
| 香りの種類 | フローラル、柑橘、松脂、ウッディ | トロピカルフルーツ(極めて強力) |
| ABVとの関係 | 高ABVほど溶解量が増加 | ABVとは無関係 |
| 量を決める要因 | ホップの品種・投入量・DH条件 | 酵母の種類(β-リアーゼ酵素の有無) |

チオールの量を最大化したいなら、ABVを上げるのではなくチオール化酵母を使うのが最も効果的だホプ。Berkeley Yeastの「Tropics」やOmega Yeastの「Cosmic Punch」を使うと、通常の酵母では100 ng/L以下のチオール濃度が2〜10 μg/L(20〜100倍)に跳ね上がるホプ!
マッシュホッピングとの混同に注意
「ダブルマッシュ」と「マッシュホッピング」は名前が似ているけど全く別の技法だから注意だね
マッシュホッピングとは、マッシュ(糖化)の段階でホップを投入する技法です。Cerebral Brewingは全ヘイジーIPAバッチでマッシュホッピングを行い、バレルあたり0.5ポンドのCascadeを投入しています。
マッシュホッピングの効果として:
- チオール前駆体の抽出:マッシュ段階でホップの結合型チオール前駆体が麦汁に溶出し、チオール化酵母との組み合わせでトロピカルアロマが増強
- 金属イオンの除去:ホップ酸が鉄イオンと結合し、ビール中の鉄分を最大30%減少させ、酸化を遅らせる(Scott Janish, The New IPA)
ただしBerkeley Yeastの最新見解では、マッシュホッピングは「必ずしも必要ではなく、Saaz、Mittelfruh、Tettnangなど一部のホップでは野菜的・スパイシーな不快な風味をもたらす」とされており、大麦自体に十分なチオール前駆体が含まれているとしています。
まとめ:ダブルマッシュは味を決める要素ではない
| 要素 | 味への影響度 | 説明 |
|---|---|---|
| ダブルマッシュ | 小さい | ボディがやや厚くなる程度。設備上の手段 |
| ホップの品種と量 | 非常に大きい | ジューシーさやトロピカルな香りの最大の決定要因 |
| ドライホップのタイミングと回数 | 大きい | 発酵中 vs 発酵後で風味が変わる |
| 穀物の配合 | 大きい | 口当たりの厚み・クリーミーさ・濁り |
| 酵母の選択 | 大きい | フルーティな香りの量や質を左右 |
| 水質 | 中程度 | 塩化物と硫酸塩の比率でバランスが変わる |
| マッシュ温度 | 中程度 | 低め(65°C)でドライに、高め(68°C)でフルボディに |
| 酸素管理 | 大きい | 酸化するとホップの香りが急速に劣化 |

Brujosはダブルマッシュを明記して超高ABVビールのリッチさをアピール。Fidensは小規模設備ゆえのダブルバッチが日常だけど味の秘密はホップ選別と酸素管理。Other Halfは極端なオーツ比率とラクトースで独自路線。Tree Houseは低温ワールプール、Monkishは発酵後DHでホップの個性を際立たせる。それぞれの哲学があるホプ!
「ダブルマッシュをしている=味が良い」と単純には言えないけど、小規模ブルワリーにとってはダブルマッシュが高ABVのリッチなビールを造る唯一の方法であり、その結果としてボディの厚みや甘みの残り方が変わる。つまり設備の制約が味の個性を生むこともある。それぞれのブルワリーが自分の設備と哲学に合った方法で最高の味を追求している。ぜひ実際にこれらのブルワリーのビールを飲み比べて、違いを感じてみてね!
自分でレシピを設計してみたい方は、レシピビルダーでABV・IBU・SRMをシミュレーションできます。ビアスタイルガイドでHazy IPAのスタイルガイドラインも確認してみてください。
よくある質問(FAQ)
Q. ダブルマッシュとダブルバッチは同じ意味ですか?
厳密には異なります。ダブルバッチ(パターン1)は同じレシピで2回マッシュして麦汁を合わせ、量を増やす手法です。一方、リイテレーテッドマッシュ(パターン2)は1回目の麦汁を水の代わりに使い、濃度を上げる手法です。どちらも「ダブルマッシュ」と呼ばれることがあるため、文脈の確認が重要です。
Q. ダブルマッシュをすると味が良くなるのですか?
ダブルバッチ(パターン1)ではシングルマッシュとほぼ同じ味になります。リイテレーテッドマッシュ(パターン2)ではボディが厚くなり甘みが残りやすくなりますが、これは「改良」ではなく副次効果です。ヘイジーIPAの味を決めるのはホップの品種・量、酵母、水質、ドライホップのタイミングなど他の要素です。
Q. ヘイジーIPAのフルーティさはアルコール度数と関係がありますか?
はい、間接的に関係します。アルコールはホップオイル(精油成分)の溶媒として機能し、ABVが高いほどドライホップから多くの香り成分が溶け込みます。ただし、トロピカルアロマの鍵となる「チオール」はABVではなく酵母の種類(チオール化酵母)で決まります。
Q. 主要ヘイジーIPAブルワリーでダブルマッシュを使っているのはどこですか?
今回調査した12社のうち、リイテレーテッドマッシュ(パターン2)を公式に使用しているのはBrujos Brewingのみで、ABV 10%超のクアドルプルIPAで「2x Mash」と表記しています。The Alchemistは4バッチを1タンクに統合するダブルバッチ(パターン1)を日常的に行っています。Tree House、Fidens、Foamなどの小規模設備でもダブルバッチは一般的です。
Q. マッシュホッピングとダブルマッシュの違いは何ですか?
全く別の技法です。ダブルマッシュは穀物の糖化を2回行う工程で、設備上の理由で行います。マッシュホッピングはマッシュ時にホップを入れる技法で、チオール前駆体の抽出や金属イオン除去に効果があります。名前は似ていますが、目的も効果も異なります。

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